地下書庫に憩う日々

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やさしい線の絵にひかれた/海街diary1 蝉時雨のやむ頃

海街diary1 蝉時雨のやむ頃 吉田秋生 flowers comics 小学館

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

線のやさしい表紙の絵にひかれて購入。

鎌倉を舞台にして、よそとはちょっと違う家族の、いたって日常的な出来事をつづっていく物語だ。物語は、鎌倉に住む幸田幸、佳乃、千佳の三姉妹の訃報から始まる。長年別居していた父親の葬儀の場で、腹違いの妹、浅野すずと出会う。すずが、やや頼りない継母たちとの生活では「子供」としてふるまえていないことを見抜いた姉・幸が、別れ際に鎌倉で一緒に住まないかと持ちかける。二つ返事で頷いたすずが一緒に住み始め、すずとその同級生やサッカークラブのチームメイト、近所の人たち、姉たちの恋人や職場の人間などの物語が、鎌倉の街の中で同時進行的に進んでいく。

鎌倉に行ってみたことはないのだが、作画の端々から古く奥行きのある街並みを感じることができた。京都もそうだが、一見観光地化が進んでいる古い街であっても、一歩コースから外れて住んでいる人の生活圏に入っていくと、古くからの積み重ねを色濃く残した地域がたくさん見られる。それらを背景とした人間模様を丁寧に描いた作品で、話ごとにことなる登場人物に焦点があわせられていき、読むのに引き込まれる。

いちばんの主人公は浅野すずであり、彼女を慕う風太やその他の友達たちとの出来事が物語の主軸になるのかなと思うが、この作品を読んでいて気付いたのは、そんな子供たちを見守る大人の存在だ。すずを引き取るといった幸や佳乃、千佳といった姉たちを始め、作品中にはすずたち子供を支える大人が数多く登場する。すずの継母が大人になりきれない人だったのとは好対照をなしていると思う(作者のこの継母「陽子さん」への視線はとりわけ厳しいような気もする)。彼ら大人たちは、地域の働き手として、親として、またサッカーチームのサポーターとして子供たちを日々見守っている。大人ってなんだろう、子供が育っていくってどういうことだろう、ということも考えさせられた。

そんな大人たちも個々には自分の物語というか、いろいろ悩みなり葛藤なりがあるわけで、それらも同時に進行していくところに作品の奥深さがあると思う。