地下書庫に憩う日々

最近読んだ書籍の目録

遺体ー震災、津波の果てに

知らされていなかった被災地の状況/遺体 新潮社

遺体―震災、津波の果てに

この本を読みながら、何度も涙がわき上がってくるのを感じた。2011年3月11日の大震災と、それに伴う津波によって多くの人が犠牲になった。私たちはその津波が町を襲う写真や映像を何度となくテレビやインターネットで見る機会があった。また、震災によって2万人近い人が犠牲になったことも知っている。

でも、私も含めた一般の人は、犠牲となった方々がどのような状態で発見されたのか、どのように遺体が保管され供養されたのか、そのことについては一つの写真も動画も見たことが無いという人がほとんどなのではないだろうか?

もちろん、当時そのような映像がテレビで放映されたとしたら、それを正視できる人がどれほどいたかは分からない。私も、そんな映像が流れてきたら、すぐにチャンネルを切り替えていたかもしれない。しかし、多数の人が一気に津波に押し流され、その遺体が波が引いた後に残されたとしたら、どんな惨状になるか。想像だけでは分からないその状況や当事者の感情が、生々しく記述されていた。当時どんな状況になったのかを、この本を読みながら知っていくのはつらいことだった。でも、これは知らなければならないことだ。たとえ、被災した人々の気持ちを完全には分かることができないとしても、だ。当時そこにいた人が何を見たのか、どれほどの極限状態におかれたのかについて知識としてでも知っていることが重要だと思った。

また、普段はあまり意識しないが、宗教や信仰といったものの意味についても考えさせられた。よく言われるように、供養する、祈るという行為は、死んでいった人たちのためだけではない、生きている人たちがこれからも生きていく為にも必要なことなのだろう。震災からの復興も、前へ進んでいくということと、震災を振り返り供養する/祈るということとのバランスをどうとっていくのかが重要なのだろう。震災を経験していない私がせめて、知識として、そしてその知識からどんな感情がわき上がってくるのかを知っておく為にも、読んでよかったと思った。