地下書庫に憩う日々

最近読んだ書籍の目録

ラノベの海から読み取れること / 若者の気分 シャカイ系の想像力

若者の気分 シャカイ系の想像力 中西新太郎 著 岩波書店

シャカイ系の想像力 (若者の気分)

1.若者文化の「いま」を知る

 

若者向けポピュラーフィクションの作り手と受け手

若者にとっての現代とは

分岐する「若者」

 

 

2.自省と独断とーライトノベルの世界

 

ライトノベルの系譜を探る

青春小説及び境界領域の作家たち

留保ー韜晦の話法

「俺様主義」の魅力

 

3.死と生をめぐるイミジェリ

 

共有される心象

孤立のかたち

透明な自己のアンビヴァレント

死んでいる私達には何よりも生きる目的が必要だ

他者という謎/空洞化する親密圏

親密圏を侵蝕する「社会」

 

4.「平凡なうちら」が築く友愛

 

社会のよそよそしい威力

生きづらさからの脱出という主題

「でもね…」ー無力を社会に投げ返す

醒めた絶望が育む同盟

普通の人生を選びとる意志

 

 

おわりに

もっと知りたい人のために

 

大学図書館の長期貸し出しを利用。ライトノベルとよばれる、中高生〜20代が主な書き手、及び読み手となっている小説群の分析から、若者の置かれた状況を分析しようとする社会か学的な研究についての報告だった。まず驚くのが、研究のために読み込まれているラノベの作品数だ。この本の中だけでも何十冊という作品に言及されているが、著者はおそらく常日頃から大量のラノベを読み込んでいると思われる。一般的にはあまり高い評価を得ていないと思われるラノベにこれほどの労力・情熱を注いでいるところが、自分が社会科学の研究って面白そうだなあと思う反面、自分自身がやっていることの価値(普遍性や一般性という点で)を自問自答してしまいそうだなあという、相反する感想を抱く原因だと思う。

ラノベは、表紙や挿絵の「萌え画」や、主人公がいつもモテモテになるご都合主義、ありえないような設定などで、いわゆるオタク層の読み物と思われている。実際自分も、本屋で手に取って眺めているのはやや気が引ける感じはするし、ラノベコーナーに立っているのは、たいてい若くてあんまりもてなさそうな男性客が多い印象がある(自分も同じ部類に入ると思うので暴言はお許しを)。しかし、読者世代と作者世代がほぼ同じラノベ作品群を大量に読んでいくと、そのような表面的な特徴がはげ落ちた後の、現代のこの世代の心象風景が見えてくるという著者の主張は、説得力があると感じた。それはやや内向きで、フラジャイルな感じもするけれど、社会(外界)の暴力的な圧力から逃れ、人間らしさを保とうとする動きのようにも感じられる。

これらの物語は、同じ若者と言ってもより高い家柄、学歴、容姿などを備えたエスタブリッシュには通じないものかもしれない。ラノベをたまに読んでいて、そのあまりにもフラジャイルな世界観にお腹いっぱいになることもある。しかし、二極化が進み、社会も以前のような余裕を失いつつある中、相対的に弱い立場におかれる(ラノベ読者のような)若者がどのように思い、考え、希望を見いだしていくのかを、ラノベの海から読み取っていく作業には、大きな意味があると思われる。